Japanische Klassiker mit Furigana
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オチフルイかいじゅうろうてがらばなし
十二神貝十郎手柄話
国枝 史郎
Lesen Sie 十二神貝十郎手柄話 (オチフルイかいじゅうろうてがらばなし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.035 Zeichen · 254 Bildschirme
舟のりをする身のならい
死ぬることこそ多ければ
さて漕ぎいだすわが舟の
しだいに遠くなるにつれ
山の裾辺の麦の小田
いまを季節とみのれるが
苅りいる人もなつかしし
わが乗る舟の行くにつれ
舟足かろきためからか
わが乗る舟の行くにつれ
色も姿もおちかたの
深き霞にとざされぬ
われらの舟路! われらの舟路!
つれてバラードの楽の音が聞こえた。
「あッ!」とその刹那京一郎は、縁に突っ立って動こうともせず、首を伸ばして聞き澄ました。
七
(幽暗なる世界なるかな
蠱物めきしたたずまいなるかな
ここにある物は「現在」の頽廃、ここにある物は過去への思慕、ここに住める物は生ける亡霊、この部屋へ入る者は襲わるべし)
こういう箴言が壁の一所に、掲げられていなければ不似合いである。――と、そんなように思われるほど、この部屋は陰気で悲し気で、他界的で気味が悪かった。
京一郎の父で塩屋の主、お才の良人の嘉右衛門が、十数年来孤独に住んでいる、庭の奥の林の中の、廃屋の中の部屋であった。万国地図と海図との懸かった、一方の壁へ背を向けて、背革紫檀の古風で寛濶な、肘掛椅子に腰をかけ、嘉右衛門はバラードを弾いている。