Japanische Klassiker mit Furigana
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ちよこ
千世子
宮本 百合子
Lesen Sie 千世子 (ちよこ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 83.104 Zeichen · 164 Bildschirme
「今夜でも来ればいいのに――それでなければあしたの朝早くでも――」
こんな事も思って居た。
青い海とがけの多い箱根を見て単調に暮す海辺の生活を想って見たり、海の面には陽炎が立って居るだろうの朝起きるとすぐむれた足をひやっこい水にひたす時の気持なんかをたのしい気持で思って居た。若い女がだれでも感じる様に旅に出る前夜のわけもわからないワクワクした感じにとらわれて居た。
その晩は安眠する事が出来ないで早く眼をさました時、母親や女中達はもうコトコトと何かして居た。寝間着のまんま千世子は自分でかたをつけなければならないものに手をつけ始めた。
すき見されるのを案じる様に千世子は書いたものの入って居る文庫に鍵をかけ、出て居るのを皆本箱にしまって妙にガランとした部屋の中をひっこしをする時の様な目つきをして見て居た。
「千世ちゃん入れるものはもって来るんだよ、もうすっかり私達の方は出来たんだから……」
千世子は斯う云われるともう一週間もかかってきめて置いたものでありながら何となし不安心な気持がしてあっちこっちとせせったあげく、入りもしない書きぬきなんかをつまみぬいてヨチヨチした神経質な目つきをして母親にケースの中につめてもらった。