Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
検査室にも、待合室にも松が飾ってあって、繋留場では赤い牝牛が一頭と、黒牛が二頭繋いであった。
中央の庭には一頭の豚を入れた大きな箱も置いてあった。この庭は低い黒塗りの板塀を境にして、屠場に続いている。
屠牛の二
黒い外套に鳥打帽を冠った獣医が入って来た。人々は互に新年の挨拶を取換した。屠手の群はいずれも白い被服を着け、素足に冷飯草履という寒そうな風体で、それぞれ支度を始める。庭の隅にかがんで鋭い出刃包丁を磨ぐのもある。肉屋の亭主は板塀に立て掛けてあった大鉞を取って私に示した。薪割を見るような道具だ。一方に五六寸ほどの尖った鉄管が附けてある。その柄には乾いた牛の血が附着していた。屠殺に用いるのだそうだ。肉屋の亭主は沈着いた調子で、以前には太い釘の形状したのを用いたが、この管状の方が丈夫で、打撃に力が入ることなどを私に説明した。
南部産の黒い牡牛が、やがて中央の庭へ引出されることに成った。その鼻息も白く見えた。繋いであった他の二頭は遽かに騒ぎ始めた。屠手の一人は赤い牡牛の傍へ寄り、鼻面を押えながら「ドウ、ドウ」と言って制する。その側には雑種の牡牛が首を左右に振り、繋がれたまま柱を一廻りして、しきりに逃れよう逃れようとしている。