Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
「はい、漸く二三日前に。これでも昔は十日前に植付けたものでごわすが、近頃はずっと遅く成りました。日蔭に成る田にはあまり実入も無かったものだが、この節では一ぱいに取れますよ」
「暖くなった故かナ」
「はい、それもありますが、昔と違って田の数がずっと殖えたものだから、田の水もウルミが多くなってねえ」
百姓は眺め眺め答えた。
東沢の山荘には商家の人達が集っていた。店の方には内儀さん達と、二三の小僧とを残して置いて、皆なここへ遊びに来ているという。東京の下町に人となった君は――日本橋天馬町の針問屋とか、浅草猿屋町の隠宅とかは、君にも私に可懐しい名だ――恐らく私が今どういう人達と一緒に成ったか、君の想像に上るであろうと思う。
山荘は二階建で、池を前にして、静かな沢の入口にあった。左に浅い谷を囲んだ松林の方は曇って空もよく見えなかった。快晴の日は、富士の山巓も望まれるという。池の辺に咲乱れた花あやめは楽しい感じを与えた。仕立屋は庭の高麗檜葉を指して見せて、特に東京から取寄せたものであると言ったが、あまり私の心を惹かなかった。
私達は眺望のある二階の部屋へ案内された。