Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
この日は町の大人から子供まで互に新しい晴衣を用意して待っていた日だ。
私は町の団体の暗闘に就いて多少聞いたこともあるが、そんなことをここで君に話そうとは思わない。ただ、祭以前に紛擾を重ねたと言うだけにして置こう。一時は祭をさせるとか、させないとかの騒ぎが伝えられて、毎年月の始めにアーチ風に作られる〆飾りが漸く七日目に町々の空へ掛った。その余波として、御輿を担ぎ込まれるが煩さに移転したと言われる家すらあった。そういう騒ぎの持上るというだけでも、いかにこの祭の町の人から待受けられているかが分る。多くの商人は殊に祭の賑いを期待する。養蚕から得た報酬がすくなくもこの時には費されるのであるから。
夜に入って、「湯立」という儀式があった。この晩は主な町の人々が提灯つけて社の方へ集る。それを見ようとして、私も家を出た。空には星も輝いた。社頭で飴菓子を売っている人に逢った。謡曲で一家を成した人物だとのことだが、最早長いことこの田舎に隠れている。
本町の通には紅白の提灯が往来の人の顔に映った。その影で、私は鳩屋のI、紙店のKなぞの手を引き合って来るのに逢った。いずれも近所の快活な娘達だ。