Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Lesen Sie 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.668 Zeichen · 164 Bildschirme
浅間の見えない日は心細い、などと校長の細君は話していた。
十九夜の月の光がこの谷間に射し入った。人々が多く寝静まった頃、まだ障子を明るくして、盛んに議論している浴客の声も聞えた。
「身体は小さいけれど、そんな野蛮人じゃねえ」
理屈ッぽい人達の言いそうな言葉だ。
翌日は朝霧の籠った谿谷に朝の光が満ちて、近い山も遠く、家々から立登る煙は霧よりも白く見えた。浅間は隠れた。山のかなたは青がかった灰色に光った。白い雲が山脈に添うて起るのも望まれた。国さんという可憐の少年も姉娘に附いて来ていて、温泉宿の二階で玩具の銀笛を吹いた。
そこは保福寺峠と地蔵峠とに挟まれた谷間だ。二十日の月はその晩も遅くなって上った。水の流が枕に響いて眠られないので、一旦寝た私は起きて、こういう場所の月夜の感じを味った。高い欄に倚凭って聞くと、さまざまの虫の声が水音と一緒に成って、この谷間に満ちていた。その他暗い沢の底の方には種々な声があった。――遅くなって戸を閉める音、深夜の人の話声、犬の啼声、楽しそうな農夫の唄。
四日目の朝まだ暗いうちに、私達は月明りで仕度して、段々夜の明けて行く山道を別所の方へ越した。