Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちどり

千鳥

鈴木 三重吉

Lesen Sie 千鳥 (ちどり) von 鈴木 三重吉 (すずきみえきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.951 Zeichen · 41 Bildschirme

Aozora Bunko

「ほほほ」

「フジサンというのは」

「あたしでございます」

「ああ、お藤さんとおっしゃるんですか」

「はい」と藤さんは微笑みながら、立って押入れを探す。

藤さんという名はこうして知ったのである。

「そしてあなたが何でお泣きになったんです?」

「いいえ、嘘ですの、そんなことは」

「燐寸を探していらっしゃるんですか。私が持っています」

「あら、冗談なのでございますわ。あれは章ちゃんが……」と勘違えをしている。ポケットから燐寸を出して洋灯を点すと、

「まあ、恐れ入ります」と藤さんは坐る。灯火に見れば、油絵のような艶かな人である。顔を少し赤らめている。

「あしが一番あん」と章坊が着物を引っ抱えて飛びだすと、入れ違いに小母さんがはいってきて、シャツの上から着物を着せかけてくれる。

「さ、これをあげましょう」と下締を解く。それを結んで小暗い風呂場から出てくると、藤さんが赤い裏の羽織を披げて後へ廻る。

「そんなものを私に着せるのですか」

「でもほかにはないんですもの」と肩へかける。

「それでも洋服とは楽でがんしょうがの」と、初やが焜炉を煽ぎながらいう。羽織は黄八丈である。藤さんのだということは問わずとも別っている。