Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまいち

午市

宮本 百合子

Lesen Sie 午市 (うまいち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.146 Zeichen · 17 Bildschirme

Aozora Bunko

「うそじゃあありませんのですよ」

笑いながら、おせいも傍から言葉を添えた。

「ほんとにうちでも不調法なんです」

「……情けないお客様だねえ」

やがて主人は真面目に詰らなそうな声を出して、歎息した。

「貴方、一杯や二杯は、薬にこそなれ、ちっとも毒になぞなるもんじゃあないんですぜ」

「それはそうでしょうな、だから貴方なんかもそんなに御達者なんでしょう」

危く機嫌をわるくしそうだった主人は、健介の言葉で、忽ち調子をとり戻した。

「そうですとも! 全くこれのおかげですよ。これさえありゃあ、もう何にもいりません。一昨年のあの人死にの多かった感冒にだって、こちとらはびくともしないんですからね。ええ、ええ。もうこれだけが、私の楽しみです――山際の安さんなんぞは、随分いけるんでしょう?」

彼等の間には、また新らしく故郷の酒客の噂が上りはじめた。健介は、おふゆを通して、小関の遠縁に当っていた。おふゆの両親が死絶えたので、親類ともいつか疎遠になった小関の一家は、暫く山陰地方にある国へも帰らなかった。今度、健介が、一週間ばかり法事のついでに故郷の様子を見て来たので、彼は、小関のためというより寧ろおふゆのために、おせいを伴(つ)れて訪ねて来たのであった。