Japanische Klassiker mit Furigana
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うまいち
午市
宮本 百合子
Lesen Sie 午市 (うまいち) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.146 Zeichen · 17 Bildschirme
こんな家ごみを出、露路を抜け、からりとした大通りを風に吹かれて歩いたら、どんなに心持がいいだろう。彼女は、もう酒には飽き飽きしていたし、話にも一向興が移らなかった。そうかといって、まさか、もうそんな話は止めましょうよ、とも云いかねるその場の状態が、一層おせいの退屈を募らせた。こんな月の涼やかな夏の良夜を、狭い部屋に閉じ籠って、酒のにおいに当てられて過してしまうのは、如何にも惜しく思われるのである。
おせいは、窓に向ったまま、所在なさそうに下を向いて、帯やおはしょりの端を引張った。
それにしても、もう何時頃になったのだろう。あまりおそくならないうちにここを出て、ゆっくり一停留場も歩いて帰りたい気がする。
彼女は、それとなく皆の方へ振返った。すると、健介が、まるでおせいの望を心の中から読みとりでもしたように、兵児帯の間から時計を出し始めた。
坐りながら、彼女はごく自然に、
「もう何時頃になりまして?」
と訊くことが出来た。
「余り長くお邪魔しても……」
「何、まだ宵のくちですよ。九時になりますまい? 十二時までは電車があるから、まあゆっくりしていらっしゃい」