Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
半七捕物帳
岡本 綺堂
Lesen Sie 半七捕物帳 (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.208 Zeichen · 30 Bildschirme
海苔の匂いも悪くございませんね」と、徳寿は顔じゅうを口にして、蕎麦のあたたかい匂いを嬉しそうに嗅いでいた。
蕎麦屋の女房は門の行燈に灯を入れると、その薄暗い灯かげに照らされて、花びらのような大きい雪が重そうにぼたぼた落ちているのが暖簾越しに見えた。一本の酒をやがて半分ほど飲んだ頃に、半七は話し出した。
「徳寿さん。おまえが今あすこで立ち話をしていたのは何処の寮だえ」
「旦那はあの辺においでなさいましたか。ちっとも存じませんで。はははは。いえ、あすこは廓の辰伊勢という家の寮でございますよ」
「先方じゃあ頻りに呼び込もうとするのを、おまえは無暗に逃げていたじゃあねえか。廓の寮ならば好いお得意様だ」
「ところが、旦那。どうもあすこは工合が悪いんでしてね。いえ、別に代をくれないの何のという訳じゃないんですが、なんですかこう、気味の悪いような家でしてね」
半七は飲みかけた猪口をおいた。
「気味の悪い家……。そりゃあどういうんだね。まさかに化けものが出る訳でもあるめえ」
「へえ、別にそんな噂もないんですが、わたくしはどうも気味が悪うございまして……。あすこで呼ばれると何だがぞっとして、逃げるように断わって来るんですよ」