Japanische Klassiker mit Furigana
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なんきょくき
南極記
久生 十蘭
Lesen Sie 南極記 (なんきょくき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.753 Zeichen · 35 Bildschirme
南極では、地球の回転を横から見ていることになるので、太陽は地平線の近くを横転するばかりで、三十三度半より上にはあがらず、落日はいつも斜めに沈んで行くが、これは見る眼にも印象的である。
この地方は、北極のように暖流や暖かい気流の流入がないので、世界無比の恒寒地帯になっている。内陸の奥で、零下八十四度というところまで測ったことがあったが、欧洲全土に欧露を加えたほど広いこの大陸では、一地点におけるある一日の計測などは、なんの意味もなさない。それからまだどれほど下るものか、想像もつかないからである。
内陸の氷原では、零下四十度は常温というところだが、五十度まで下ると、温度傾斜がはげしくなるので、かならず風が吹き起ってくる。氷原の氷も寒気で縮むかとみえ、地殻の苦痛が身に感じられるほどである。この凍風をまともに顔に受けると、十秒とたたぬ間に皮膚が剥がされてしまう。氷の上に立っていると、足の指が急速に死にはじめる。その辺を跳ねまわって生きかえそうと努力しているうちに、こんどは鼻が凍りだす。その手当をしていると、手が凍りつく。六十度となると、徐々に劇薬の中へ落ち込んでいく、異常な苦悶を経験することになる。