Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なんろ

南路

宮本 百合子

Lesen Sie 南路 (なんろ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.813 Zeichen · 63 Bildschirme

Aozora Bunko

私共は、言葉に云ってはいくら喋っても喋っても喋りきれない、驚や、感慨やに心を満たされていたので、口を利けば、

「まあ、ほんとに、思いがけなかったわね」

と云うよりほかない。突然変動を起した境遇に面して我々は、声も出ないほど、全心を領されたという状態だったのである。

私共は、先月の三十日に、自分等の結婚をアナウンスした許りであった。この日の一日には、眼の廻るような思いをして、故国に送るべき書きものを発送した。その五日に、思いがけない父から、思いがけない報知を受取ったのである。

五日は、どこやら時雨(しぐ)れた薄ら曇りの日であった。自分は、種々な精神感動や、仕事を纏めてしまおうとして不自然な緊張を続けたために非常に疲れて、神経質になっていた。

ちょうど、水曜日で、大学に時間はない。家にいても仕方がないので、我々は午後から連立って歩きに出た。家は、大学の近く、幾年の昔、東京府から紐育市に贈ったという桜が、あまり見事でなく生えている公園の下にあった。芝生の小路を抜け、広い街路を横切ると直ぐ、河岸公園(リバーサイド・パーク)に出る。そこからは、目の下に、初冬の日に光るハドソン河と、小霧にかすんだ対岸の樹木、渡船場等が見える。