Japanische Klassiker mit Furigana
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なんぶのはなまがり
南部の鼻曲り
久生 十蘭
Lesen Sie 南部の鼻曲り (なんぶのはなまがり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.683 Zeichen · 25 Bildschirme
冗談いってはいけない。
冗談ではない、ほんとうの話だ。それは、以前、刻印をつけてこの河へ放流した、水産局の幼魚が成長し、天性たる帰趨性にしたがってもとの古巣へ帰ってきたまでのことで、そうとわかればなあんだと思うが、胴腹に合衆国の略語をつけた大きな鮭が、背鰭をそよがせながら河の浅瀬をのぼってゆくのを見ると、おや、狐にでもつままれたかと、誰しも一応はびっくりするのである。
むかし南部藩に相馬大作というえらい鼻曲りの士がいて、「南部の鮭で鼻曲り」というのはそれからはじまった地口だと講談で読んだことがあるが、犬鮭はつまり日本で「南部の鼻曲り」といっている。なるほどブルドックの鼻に似ていないこともないが、名称としては、犬よりも鼻曲りのほうが雅味があるようである。
紅鮭は要するに紅鮭で非常に態度が鮮明だが、銀鮭となると、そのうちのあるものは王鮭に似、あるものは鼻曲りにそっくりで、そのくせ雑種というのでもない。中間的なはっきりしない存在である。四呎半氏がアメリカで鼻曲りが日本だとすると、銀鮭はまず日系米人というところかね。
これは余談だが、四月の終りごろになるとそろそろ鮭が上りはじめ、鮭船がぼうぼうの網から鮭を集めてきて、それを河岸の平底船へどんどん投げこむと、三十呎四方の魚揚場にみるみる鮭の山ができる。