Japanische Klassiker mit Furigana
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なんぶのはなまがり
南部の鼻曲り
久生 十蘭
Lesen Sie 南部の鼻曲り (なんぶのはなまがり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.683 Zeichen · 25 Bildschirme
べつに気にしなくてもいいじゃないか。
そうはいかない。クエンスローというのはどんなところだと思うのか。沙港から二千八百浬、アラスカのダッチハーバーの北十度、北氷洋に近い冷涼たる無人地方だ。
四月のはじめといえばまだいたるところに流氷が漂っている。濃霧と暗礁で有名なウニマク水道と氷山の間をすりぬけ、まる三週間ベーリングの怒濤に翻弄されながら命からがらクエンスローへ到着するという段取りだ。
こういえばザッとしたもんだが、けっして生やさしいものだと思うなよ。こういうギャランテー・ボートが無事にアラスカへ着くのは、だいたい十対四ということになっているのだ。
それはまあいいとしても、クエンスローにはアラスカ蚊と寂寥と饑餓という三つの化物がついている。それに鮭時になると時間外で、一週間一睡もできないようなこともある。そういうひどいことを極光と幻日と夜中の太陽の下で六カ月もやるのである。なかなかうまいじゃないか。
いや、そうでもない。沙港の華盛頓大学の学生は、go-getting の気性がさかんで、加奈陀に伐木夫に傭われたりアラスカの袖珍工場へ行ったりするが、学生のシイズンは二、三日で行けるケチカンかジュノオあたりがせいぜいで、こんな荒っぽい契約に出てくる向う見ずなやつは一人もいない。