Japanische Klassiker mit Furigana
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なんぶのはなまがり
南部の鼻曲り
久生 十蘭
Lesen Sie 南部の鼻曲り (なんぶのはなまがり) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.683 Zeichen · 25 Bildschirme
なにしろ、そのギャランテー・ボートに乗りこんでいるてあいは、夜中の太陽が北から出ようと南から出ようと、海豹が一と晩に百ぺん吼えようと、そんなことにはいっこう頓着しない。うまく大漁とぶちあたれば、一シイズン二千弗以上という金の女神の流し目にぼうとなって、命までもと打ちこんだプロもプロ大玄人。どちらを見ても、腰までの黒のゴム長に亜麻油の黒い防水衣という地獄の大鴉のような集団の中に、高尚の背広で出来のいいワットオの絵というんだから穏やかではなかろう。
捨ててはおけないような気持になったので、そばへ行って、
「いよう、ケチカンへ銃蘭でも摘みに行くのかね」
と声をかけると、ワットオの絵はいくらか巻舌の英語で、
「I beg yer puddin’, you said something, sir?」
失礼でございますが、なにかおっしゃいましたのでしょうか、という丁重なご挨拶だ。それでおれも丁重に、
「どうつかまつりまして、あなたさまはケチカンのあたりへご散歩にでもお出かけのところかとお伺いもうしあげました次第で」
するとワットオの絵は、また一段とへりくだって、I am sorry. My Emperor of China と流暢にはじめた。