Japanische Klassiker mit Furigana
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みなみかぜ
南風
宮本 百合子
Lesen Sie 南風 (みなみかぜ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 745 Zeichen · 2 Bildschirme
昨夜、ドッドと降って居た雨が朝になってすっかり上った。
白っぽい被のかかって居た木の葉も土も皆、美くしくうるおおされて、松だの槇だのの葉は針の様に、椿や樫の葉はテラテラに輝いて居る。
きめの細かくなった土面から、ホヤホヤと湯気が立って、ひどい雨にながされて出来た軽い泥の襞が、工合よくあちこちに波打って居る。
小石は、新鮮な光りを出して居るし、丁樹の香りが一層高い。
もう真黄に熟れて居る金柑が、如何にも美味しそうに見える。
私が七つか八つの時分、金柑が大好きで、その頃向島に居た祖母のところへ宿りに行くときっと浅草につれて行ってもらって、金柑の糸の袋に入ったのを買ってもらった。
狭い帯を矢の字にして、赤い手袋をした小さい手に金柑の袋を下げて満足して居た私が、金柑の実の中に笑って居る。
水気の多い南風がかるく吹いて、この間種ねを下した麦だの、その他の草花の青い芽が、スイスイと一晩の中に萌え出て仕舞って居る。
私のきらいなあの紅い椿も、今日は、うるんだ色に見えて居るし、高々と、空の中に咲いて居る白木蓮の花が、まぶしい。
私の体のまわりに一時きに春が迫った様な感じがする。