Japanische Klassiker mit Furigana
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
Lesen Sie 原民喜戦後全小説 (はるかなたび) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.577 Zeichen · 124 Bildschirme
生きていればこうして逢う機会もやって来たのかと、彼もしきりに思い耽けった。
Kはそれから後は時折訪ねてくれるようになった。
翌年の春、彼の作品集がはじめて世の中に出た。が、彼はその本を手にした時も、喜んでいいのか悲しんでいいのか、はっきりしなかった。……彼が結婚したばかりの頃のことだった。妻は死のことを夢みるように語ることがあった。若い妻の顔を眺めていると、ふと間もなく彼女に死なれてしまうのではないかという気がした。もし妻と死別れたら、一年間だけ生き残ろう、悲しい美しい一冊の詩集を書き残すために……と突飛な烈しい念想がその時胸のなかに浮上ってたぎったのだった。
夕方、いつものように彼は九段下から溝川に添って歩いていた。雉子橋の上まで来たとき、ふとだし抜けに誰かに叫びとめられた。忙しげに近づいて来るのはKだった。
『その辺でお茶飲もう』と、Kは彼の片腕を執るようにしてせかせか歩きだした。その調子に二十代の昔の面影があった。
『散歩していたのだよ』と彼は笑いながら白状した。
『わかってるよ。こんな時刻にこんなところ散歩なんかしている人間は君位のものさ』と、Kは別に驚きもしなかった。