Japanische Klassiker mit Furigana
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こぼく
古木
豊島 与志雄
Lesen Sie 古木 (こぼく) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.648 Zeichen · 24 Bildschirme
」
この椎の木が、今まで生き存えてきたのも、幸運に恵まれたからだとも言えますでしょう。何百年もの間には、落雷を受けることだって有り得たでしょうし、特別の災害を受けることも有り得たでしょう。柴田巳之助が覚えてる限りでは、二十数年前の関東大震災の時だって、情況が変っていたら焼けたかも知れません。
その時、九月一日の正午二分前、大地の鳴動と震動に、椎の大木は、幹に亀裂がはいりはすまいかと思われるほど揺ぎ且つ撓いました。然しそれも一瞬のことで、引続く余震には毅然と抵抗しました。
近くに火災が起りました。それがもしも燃え拡がっていたら、椎の木は危いところでしたが、十戸ばかりで止みました。
火災は遠くの地区を嘗めつくしてゆきました。二日の夜明けには、火先は一粁ほどのところへまで寄せてきました。潮鳴りのような音をたててる火と煙との海でした。それがどこまで寄せてくるか、予想はつきませんでした。椎の木の半面は、昼間よりも明るく、重なり合った葉の一つ一つ、樹皮の皺の一つ一つが、はっきり数えられるほどでした。然し、それだけのことで済みました。
この椎の木のほとりを、人々は避難所としました。