Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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めいくんただゆき

名君忠之

夢野 久作

Lesen Sie 名君忠之 (めいくんただゆき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.683 Zeichen · 32 Bildschirme

Aozora Bunko

ハッハッ……コレ小僧。モソッと褒美を遣りたいがのう。この忠之は貧乏でのう……。ウムウム。よいものを取らする。その紙と筆を持て……」

淵老人はハッとしたらしく顔色を変えて忠之を仰いだ。この上に知行を分けられては、お納戸の遣繰が付かなくなるからである。そう思ってハラハラしいしい皆と一所に一心に忠之の筆の動きを見上げているうちに、奉書の紙の上に忠之自慢の三匹馬の絵が出来上った。

「コレ与一。余が絵を描いて取らする。ハハ。上手じゃろうがの……その上の讃を読んでみい」

押し戴いた紙を膝の上に伸ばした与一は、ハッキリした声で走書の讃を読んだ。

「ものの夫の心の駒は忠の鞭……忠の鞭……孝の手綱ぞ……行くも帰るも……」

「おお……よく読んだ。よく読んだ。その忠の一字をその方に与える。余の諱じゃ。今日より塙代与一忠純と名乗れい」

一座の者が皆ため息をした。これ程の御機嫌、これ程の名誉は先代以来無い事であった。

しかし与一は眉一つ動かさなかった。その膝の上のお墨付と、その上に重ねた絵を両手で押えて、ジッと見詰めているうちに、涙を一しずくポタリと紙の中央に落した。……と思ううちに又一しずく……しまいには止め度もなくバラバラと滴り落ちて、薄墨の馬の絵が見る見る散りニジンで行った。