Japanische Klassiker mit Furigana
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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
Lesen Sie 名娼満月 (めいしょうまんげつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.840 Zeichen · 37 Bildschirme
無我夢中で急いでいた。……大工上りの袁許坊主……井遷寺のカラクリ本堂……思いもかけぬ大金儲けの緒……生命がけの大冒険……といったような問題を、心の中でくり返しくり返し考えながら……。
無間山井遷寺は聞きしにまさる雄大な荒廃寺であった。星明りに透かしてみると墓原らしい処は一面の竹籔となって、数百年の大銀杏が真黒い巨人のように切れ切れの天の河を押し上げ、本堂の屋根に生えたペンペン草、紫苑のたぐいが、下から這い上った蔦や、葛蔓とからみ合って、夜目にもアリアリと森のように茂り重なっていた。
見張りの眼を巧みに潜ってきた銀之丞が、閉め切った本堂の雨戸の隙間からチラチラ洩れる火影を窺いてみると、正しく天下晴れての袁彦道の真盛り。月代の伸びた荒くれ男どもは本職の渡世人らしく、頬冠りや向う鉢巻で群がっている穢苦しい老若は、近郷近在の百姓や地主らしい。正面に雲竜の刺青の片肌を脱いで、大胡坐を掻いた和尚の前に積み上げてある寺銭が山のよう。盆茣蓙を取巻いて円陣を作った人々の背後に並んだ酒肴の芳香が、雨戸の隙間からプンプンと洩れて来て、銀之丞の空腹を、たまらなく抉るのであった。