Japanische Klassiker mit Furigana
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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
Lesen Sie 名娼満月 (めいしょうまんげつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.840 Zeichen · 37 Bildschirme
昨夜の酒手が利いたらしくキビキビと立働らいて、間もなく帆を十分に引上げると、港中の注視の的になりながら、これ見よがしに港口を出るや否や、マトモ一パイに孕んだ帆を七分三分に引下げた。暴風雨模様の高浪を追越し追越し、白泡を噛み、飛沫を蹴上げて天馬空を駛るが如く、五島列島の北の端、城ヶ島を目がけて一直線。その日の夕方も、まだ日の高いうちに、野崎島をめぐって神之浦へ切れ込むと、そこへ山のような和蘭陀船が一艘碇泊って、風待ちをしているのが眼に付いた。
「ナアルほどなあ。千六旦那の眼ンクリ玉はチイット計り違わっしゃるばい。摺鉢の底の長崎から、この船の風待ちが見えとるけになあ。ハハハハ……」
と感心する船頭の笑い声を眼で押えた千六は、兼ねて用意していた福昌号の三角旗を船の舳に立てさした。風のない島影の海岸近くをスルスルと辷るように和蘭船へ接近して帆を卸すと、ピッタリと横付けにした。
船の甲板から人相の悪い紅毛人の顔がズラリと並んで覗いていた。口々に和蘭語で叫んだ。
「何だ貴様は……何だ何だ……」
千六はもう長崎に来てから、各国の言葉に通じていた。その中でも和蘭語は最も得意とするところであった。