Japanische Klassiker mit Furigana
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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
Lesen Sie 名娼満月 (めいしょうまんげつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.840 Zeichen · 37 Bildschirme
その夜は如何ようなめぐり合わせでも御座りましつろうか、拭うたような仲秋の満月の夜で御座いましたが、重たい枕を上げる力ものうなりました人間の満月どのは、おろおろしておいでになりまする金丸様のお手と、駈付けて参りました私の手を瘠せ枯れた右と左の手に力なく振って、庭の面にさらばう虫の声よりも細々とした息の下に、かような遺言をなされました。
……これまでの方々様の御心づくし、何と御礼を申上げましょうやら。つたないこの身に余り過ぎました栄耀栄華。空恐ろしゅうて行く先が思い遣られまする計りで御座います。ただ、おゆるし下されませ。金丸様と、御楼主様の御恩のほどは生々世々犬畜生、虫ケラに生れ代りましょうとも決して忘れは致しますまい。
……わたくし幼少い時より両親に死に別れまして、親身の親孝行も致しようのない身の上とて、この上はただ御楼主様の御養育の御恩を、一心にお返しするよりほかに道はないと、そればかりを楽しみに思い詰めて成長くなりましたところへ、肉親の親から譲られましたこの重病。いずれ長い寿命はないものと思い諦らめましてからというもの、一も御店のため、二も御楼主様への御恩返しとあらゆる有難い御嫖客様を手玉に取り、いく程の罪を重ねましたことやら。