Japanische Klassiker mit Furigana
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るそんのつぼ
呂宋の壺
久生 十蘭
Lesen Sie 呂宋の壺 (るそんのつぼ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.375 Zeichen · 36 Bildschirme
吉之丞と大谷の姉弟は、昨夜のうちに胴ノ間を出、甲板の隅に寝所を移していたので騒がずにすんだが、なにも知らずに胴ノ間に寝ていたマレー人どもは浸水におどろき、あわてふためいて甲板へ駆けあがってきた。
午後になると、水は甲板の上まであがってきて、誰の眼にも遅かれ早かれ、船は沈没する運命にあるのだということがわかった。
夜の八時ごろ、船体が微妙に震動し、ひとの心をしめつけるような無気味な唸りが、どこからともなくひびいてきた。
水と甲板の間に圧し縮められた空気が、甲板を破って外に出ようとしている。
「こりゃ、飛ばされてしまうたい。さ、立たっし」
吉之丞は大谷姉弟の手をとって、後帆柱の繩梯子に縋りつかせたその瞬間、落雷のような音をたてて、甲板のまんなかほどのところに大きな穴があいた。
「こんなところにいるわけにゃいかん。上の見張台へあがりましょう」
三人が後帆柱の見張台にあがったのを見ると、甲板にいるだけの人間が一斉に繩梯子のほうへ突進してきた。われ先にとひとをおし退けて上ってくるので、一間四方ぐらいの見張台はたちまち満員になり、遅れた組は鈴成りに繩梯子にぶらさがった。