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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

○

爆弾はわたくしの家と蔵書とを焼いた。わたくしの家には父母のみならず祖父の手にした書巻と、わたくしが西洋から携帰ったものがあった。わたくしは今辞書の一冊だも持たない身となった。今よりして後、死の来るまで――それはさほど遠いことではなかろうが――それまでの間継続されそうな文筆生活の前途を望見する時頗途法に暮れながら、わたくしは西行と芭蕉の事を思い浮べる。

歌人となろうが為めでもなければ、また俳諧師となろうがためでもない。わたくしはただこの二人の詩人がいずれも家を捨て、放浪の生涯に身を終ったことに心づいたからである。家がなければ平生詩作の参考に供すべき書巻を持っていよう筈がない。さびしき二人の作品は座右の書物から興会を得たものではなく、直接道途の観察と旅の哀愁から得たものである。

一人は宮中護衛の職務と妻子とを捨て、他の一人もまた同じように祖先伝来の家禄を顧みず、共に放浪の身の自由にあこがれ、別離の哀愁に人の運命を悲しんだ。いずれにしても希望の声を世に伝えたものではない。

しかるに一時栄えた昭和の軍人政府は日蓮宗の経文の或辞句をさえ抹消させながら、世に山家集と七部集の存することを忘れて問わなかった。