Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
と思うと、猶更新太郎は是非とも行先を尋ねて、むかし世話になった礼を言いたいと云う心持になる。あの時分景気のよかった芸者やお客の姿が目に浮ぶ。おかみさんの友達で待合や芸者家を出していた姉さん達も数えれば五人や六人はあった筈だ。その中どこかで、その一人くらいには逢いそうなものだと、新太郎はトラックを走らせる間も、折々行きかう人に気をつけていた。
或日のこと。東京の中野から小田原へ転宅する人の荷物を積み載せて、東海道を走って行く途中、藤沢あたりの道端で一休みしたついでに松の木蔭で弁当を食っていた時、垢抜けのした奥様らしい人がポペラニヤ種の小犬をつれて歩いて来るのを見た。犬にもチャンと見覚えがあるが、しかしその名は奥様の名と共に思出せそうで出せない。新太郎は弁当箱を片手に立上りながら、「もし、もみじのお客様。」と呼びかけ、「わたしです。この辺にいらっしゃるんですか。」
「あら。」と云ったまま奥様も新太郎の名を忘れていたと見え、一寸言葉を淀ませ、「いつ帰って来たの。」
「この春かえりました。もみじのおかみさんはどうしましたろう。尋ねて上げたいと思って町会できいて見たんですがわからないんです。