Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
丁度いい時分だ。夕飯でも食って、ゆっくり話をきこう。」
「上田さんはどうしましたろう。」と新太郎は靴をぬぎながら、料理番上田のことをきく。
「上田は家が岐阜だから、便はないが、大方疎開しているだろう。疎開のおかげで、此方もまアこうして居られるわけだ。何一ツ焼きゃアしないよ。」と、旦那はおかみさんを呼び、「飯は後にして、お早くビールをお願いしたいね。」
「はい。ただ今。」
新太郎は土産にするつもりで、ポケットに亜米利加の巻烟草を二箱ばかり入れて来たのであるが、旦那は袂から同じような紙袋を出し一本を抜取ると共に、袋のままに新太郎に勧めるので、新太郎は土産物を出しおくれて、手をポケットに突込んだまま、
「もうどうぞ。」
「配給の煙草ばかりは呑めないな。くらべ物にならない。戦争に負けるのは煙草を見てもわかるよ。」
おかみさんが茶ぶ台を座敷へ持ち出し、
「新ちゃん。さアもっと此方へおいで。何もないんだよ。」
茶ぶ台には胡瓜もみとえぶし鮭、コップが二ツ。おかみさんはビールの罎を取上げ、
「井戸の水だから冷くないかも知れません。」
「まア、旦那から。」と新太郎は主人が一口飲むのを待ってからコップを取上げた。