Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
。その中台所で鼠のあれる音に気がついて、茶ぶ台を片づけるのが、その日の生活の終りである。
そういう家庭であるから、季子はそれほど居づらく思うわけの無い事は、自分ながら能く承知しているのだ。自分の方から進んで手伝う時の外、洗いものも掃除も姉から言いつけられたことはない。兄はまた初めから何に限らず小言がましく聞えるような忠告はした事がなく、郵便を出させにやる事も滅多にない。日曜日に子供も一緒に夫婦連立って買物方々出歩こうと云う折など、「季ちゃん。一緒に行くかね。」と誘うこともあるが、是非にと云う程の様子は見せず、そうかと云って留守をたのむとも言わない。季子はおのずと家に居残るようになると、却て元気づき、声を張り上げて流行唄を歌いながら、洗濯をしたり、台所の物を片づけたりした後、戸棚をあけて食残りの物を皿まで嘗めてしまったり、配給の薩摩芋をふかして色気なく貪り食う。またぼんやり勝手口へ出て垣根の杭に寄りかかりながら晴れた日の空や日かげを見詰めている事もあった。
季子はどうして姉の家にいるのがいやなのか、自分ながらその心持がわからなかったのであるが、日数のたつに従い、静に考えて見ると、姉の家が居づらいのではなくて、それは別の事から起って来る感情の為である事に心づいて来た。