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Japanische Klassiker mit Furigana

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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「そうですか。市川駅は省線ばかりなんですか。」

「ええ。」と云って息を引く拍子に、季子は烟草の烟を吸込んでむせようとした。

「失礼。失礼。」と男は手を挙げて烟を払いながら立上り、出口から見える闇市の灯を眺めていたが、そのまま振返りもせずに出て行った。

列車の響と共に汽笛の声がして、上りと下りの電車が前後して着いたらしく、改札口は駈け込む人と、押合いながら出て来る人とで俄に混雑し初めたが、それも嵐の過ぎ去るように忽ちもとの静けさに立返る。

季子は声まで出して思うさま大きな欠伸をしつづけたが、こんな処にはもう我慢してもいられないとでも云うように、腰掛を立ち、来た時のようにぶらりぶらりと夜店の灯の見える方へと歩き初めた。

夜店の女達は立止ったり通り過ぎたりする人を呼びかけて、

「甘い羊羹ですよ。甘いんですよ。」

「あん麺麭はいかがです。」

「もうおしまいだ。安くまけますよ。」

道の曲角まで来ると先程駅の事をきいた鳥打帽の青年が電信柱のところに立っていて、季子の姿を見とめ、

「もうお帰りですか。」

季子は知らない振もしていられず、ちょっと笑顔を見せて、そのまま歩き過ると、男も少し離れて同じ方向へと歩き初める。