Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
そう思うと年頃の娘の異性に対する好奇心のみならず、季子は監督者なる姉夫婦に対して、その人達の知らない中に、そっと自分勝手に大胆な冒険を敢てすると云う、一種痛快な気味のいい心持の伴い起るのを知った。
汁粉屋を出てから、また黙って歩いて行くと、商店の燈火は次第に少く、両側には茅葺の屋根やら生垣やらが続き初め、道の行手のみならず、人家の間からも茂った松の木立の空に聳えるのが、星の光と共に物淋しく見えはじめる。走り過るトラックの灯に、真直な国道の行手までが遥に照し出されるたびたび、荷車や人の往来も一歩一歩途絶え勝ちになることが能く見定められる。
鳥打帽の男は黙ってついて来る。季子は汁粉屋にいた時の大胆不敵な覚悟に似ず、俄に歩調を早め、やがて道端のポストを目当に、逃るようにとある小径へ曲ろうとした。男はぐっと身近に寄り添って来て、
「お宅はこの横町……。」
「ええ。」と季子は答えた。しかし季子の家は横町を行尽して、京成電車の踏切を越し、それからまだ大分歩かなければならないのだ。
小径の両側には生垣や竹垣がつづいていて、国道よりも一層さびしく人は一人も通らないが、門柱の電燈や、窓から漏れる人家の灯影で真の闇にはなっていない。