Japanische Klassiker mit Furigana
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あづまばし
問はずがたり・吾妻橋 他十六篇
永井 荷風
Lesen Sie 問はずがたり・吾妻橋 他十六篇 (あづまばし) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 75.586 Zeichen · 159 Bildschirme
激しく匂いわたる線香の烟が風になびいて部屋の中まで流れ込んでくるようにも思われた。
昼寐の夜具を敷きながら墓地の方を見下すと、いつも落葉に埋れたまま打棄ててある古びた墓も今日は奇麗に掃除されて、花や線香が供えられている。本堂の方では経を読む声、鉦を打つ音もしている。道子は今年もいつか盆の十三日になったのだと初めて気がついた時である。聞き馴れぬ女の声を聞きつけ、またもや窓から首を出して見ると、日本髪に日本服を着た奥さまらしい若い女と、その母親かとも思われる老婆の二人が、手桶をさげた寺男に案内されて、石もまだ新しい墓の前に立って、線香の束を供えている。
道子はふと松戸の寺に葬られた母親の事を思い起した。その当時は小岩の盛り場に働いていたため、主人持の身の自由がきかず、暇を貰ってやっと葬式に行ったばかり。それから四、五年たった今日、母親の墓は在るのか無いのかわからないと思うと、何やら急に見定めて置きたい気がして、道子は敷いた夜具もそのままにして、飯も食わず、明けた窓を閉めると共に、再び外へ出た。
道子は上野から省線電車に乗り松戸の駅で降りたが、寺の名だけは思出すことができたものの、その場処は全く忘れているので、駅前にいる輪タクを呼んでそれに乗って行くと、次第に高くなって行く道が国府台の方へと降りかけるあたり。