Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よっかのあやめ

四日のあやめ

山本 周五郎

Lesen Sie 四日のあやめ (よっかのあやめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.200 Zeichen · 38 Bildschirme

Aozora Bunko

いやそれは良人ではない、痩せた皺だらけの老婆の顔、いましがた鏡の面に映った(ように思った)あの老婆の顔である。千世は恐怖のあまり吐きけにおそわれ、その吐きけから逃げようとでもするように、寝間へはゆかないで自分の居間へ戻った。

――あの老婆の顔はなにかの知らせだ、慥かに、まえにもあんなことがあった。

千世は坐って鏡を見た。白く乾いたような自分の、怯えて歪んだ顔が映った。血のけのひいた唇が見えるほどふるえている。彼女はその唇を噛んで、それから舌で濡らした。

「いいえ、そうではない」と千世は首を振りながら鏡の中の自分に云った、「決してそうではない、自分も武士の妻だ、良人の危険が怖ろしいのではない、あたしだってそれほどみれんな女ではない、ただ、いますぐに起こしては悪いような気がする、なにか考えなければならない大事なことがあるようだ」

深松伴六の知らせて来たのは重大な事であった。

彼は「とうとう徒士組と衝突した」と云った。それは馬廻りの者と徒士組の者とが決闘するという意味であった。徒士組と馬廻りとのあいだに、数年まえから根強い確執があり、いちどは衝突が避けられないだろうといわれていた。