Japanische Klassiker mit Furigana
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こくじはんのゆくえ
国事犯の行方
国枝 史郎
Lesen Sie 国事犯の行方 (こくじはんのゆくえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.341 Zeichen · 13 Bildschirme
三
これが第三の失敗である。
翌日岩村家から人が来たが彼は娘を返えそうとはしない。忽ち村中の問題となりいくらか残っていた彼の信用は是で悉皆地に墜ちて了った。
持て余した岩村家では事件を警察へ移そうとした。と、夫れ迄は豪然として空嘯いていた佐藤義範は、警察と聞いて色を変え娘を返えすと云い出した。すると今度は村の人達が村を立ち退けと強要した。
夏も終りに近付いて残暑の陽射し熱い中にも秋の姿の伺われるという八月中旬の或早朝、佐藤義範は村を立った。別れを惜んで泣いて呉れたのはお君の他には誰も無い。そのお君さえ日を経たなら彼の事などは忘れて了うであろう。そうして峰松の長男と結婚するに相違ない。――佐藤は如何にも寂しそうに首を垂れて歩くのであった。草叢では虫が鳴いている。水田では鯉が跳ねている。
三
「……何か酷く思い詰めて此処へ参られた御様子じゃ、お止めしても無駄でござろう。折角発心なされた上は、よろしい愚僧導師となってお望通り得度させてあげよう」
同じ谷村ではあったけれど宝村とは山一つ距てた此処広教寺の住職の高島智拳氏は斯う云って佐藤義範の様子を見た。
「は、どうぞお願い申します」