Japanische Klassiker mit Furigana
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トソンラン
土城廊
金 史良
Lesen Sie 土城廊 (トソンラン) von 金 史良 (きむさりゃん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.752 Zeichen · 52 Bildschirme
五
その時先達は何とも云えなかった。ただ今はこんな下男出身の助けにまで縋らねばならないのかと思えば、自分の身がうら悲しい限りだった。
「明後日の朝四時に来るがええ」炳吉は大きな手で彼のか弱い肩を二三度叩いて慰めると、からからと笑いつつどこかへ立ち去った。
「三円もくれるちゅうてな、炳吉さそう云うていたで」
彼は面を輝かせて婦に囁いた。
婦は微かに叫んだ。
「んにゃ、あの炳吉に遇っただか」
先達は闇をすかしてじっと婦を見守った。そして静かに頭をこくって肯いてみせた。
五
それから又二日雨が降った。
土城廊は大海に浮び上った鯨のように氾濫の中を泳いでいる。ポプラの木が背筋の方に静かにそそり立っていた。冷い湿気を含んだ風が時々それを踊らせる。霧が辺り一面に流れ薄白い漂いの上には真昼の太陽が坐っている。対岸はもう海のように沈没し、威勢よい濁流が菜田や水田、粟畑等を遠くまでひたひた浸していた。電信柱や老木だけが流れの上に一つ二つ立ち並んでいる。北の方に連なっているアカシヤの並木路も洪水でおおわれ、ただ石造の長橋だけが白く冴え返ったまま浮んでいた。
赤く澱み切った濁流は怖ろしい勢で土城に襲いかかり、白く泡立ち渦を巻いた。