Japanische Klassiker mit Furigana
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じごくふうけい
地獄風景
江戸川 乱歩
Lesen Sie 地獄風景 (じごくふうけい) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 53.774 Zeichen · 108 Bildschirme
船頭は二人。一人は舳に櫂をあやつる少女、一人は艫にギタを抱く少年、少女は全身に純白の羽毛の衣を纒い、少年は真紅の羽毛の衣に包まれている。紅白の美しい水鳥が、とまどいをして、ゴンドラの上に暫し蹼を休めているかと、見紛う許りだ。先着の三人の紳士淑女が、まず其舟に乗込むと、少女の櫂が静かに水を掻分けて、ゴンドラは細い淵を、緩やかに辷り始めた。
「お嬢さん、坊ちゃん、これは実に御趣向でしたね」
口髯を短く揃えた年長の紳士がニコニコしながら、船頭に話しかけた。
「坊ちゃん、それは楽器ですか。一つお弾きなさい。お嬢さんは、船を漕ぎながら歌えますか」
十七歳の坊ちゃんと、十八歳のお嬢さんは、紳士の顔を見返してニッと笑った。そして答えはなくて、少年のギタの弦が震い始め、少女の赤い唇が動いた。静かなる櫂の調子に合せて、ゴンドラの唄が水面を流れた。
「夢の国! オオ、僕等は夢の国へ旅をしているのだぜ。この子守唄はすばらしくはないか」
紳士が、歌に和する様に、柔かいバスで云った。
「本当にあの少年楽手の可愛いこと」黒い洋装の淑女が、美しいソプラノで調子を合せた。
両岸には、ドス黒い木の葉がうず高く空を覆って積重なり、その濃緑の壁に真赤な椿の花が、ポッツリにじんだ血の様に、一輪ずつ其処此処に咲いていた。