Japanische Klassiker mit Furigana
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さかたのばあい
坂田の場合
豊島 与志雄
Lesen Sie 坂田の場合 (さかたのばあい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.335 Zeichen · 29 Bildschirme
」
「そんなに必要だったのなら、なぜ損ばかりしたんです。」
敏子は返事をしないで、ほんとに微笑んでしまった。
「あんなに貧乏するって法はありません。穏かに暮していけたのに、わざわざ貧乏するということがありますか。母親や……妹がある以上は、そして、結婚までした以上は、子供まで拵えた以上は……じっとしておればいいんです。それを、あんな風に、何もかもめちゃくちゃにして、犬のような眼付をしてうろつきまわって、人につきまとって……。」
坂田はふいに口を噤んだ。敏子は急に頬をこわばらせ、眼を大きく見開いた。
「では……あの、あれからもまた、お願いにまいったことがありますの。」
坂田は返事をしなかった。暫くたって、呼鈴に手をふれて、女中をよんで珈琲を命じた。
それは何だか、話をぶち切る相図のようなものだった。敏子は黙って、かたくなっていた。その眼はうるんでいた。
坂田は珈琲をすすって、室の中を歩きだした。腹を立ててる様子だった。考えこんでる様子でもあった。やがて、その眼が異様に輝いてきた。彼は屑籠のところにいって、その中をかき廻して、引裂いた敏子の手紙を取出してきた。