Japanische Klassiker mit Furigana
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じょうちゅうのしも
城中の霜
山本 周五郎
Lesen Sie 城中の霜 (じょうちゅうのしも) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.828 Zeichen · 26 Bildschirme
って泣く勇気は、左内さまだから有ったのです、……御国を思って泣いたとも申しませぬ、お家を想って泣いたとも申しません、けれどけれど、わたくしには分ります、卑怯でも未練でもない、否えもっとお立派な、本当の命を惜しむ武士の泪だということが、わたくしには分ります」
香苗は云い終ると共にわっと泣いた。並居る人々はいつか面を垂れ、そのなかには指で眼を拭いている者さえあった、香苗は噎びあげながら座を起った。
逃げるように広間を出ると、そのまま自分の部屋へ駆込み、小机に凭れて暫くのあいだ背に波をうたせながら泣いていた。香苗は今こそ本当の左内に触れたと思った。因幡守から笑って死んだと云われたとき、どうしても心に生きている左内とはぴったりせず、まるで他人の事を聞いているような気持だったのが、今こそ左内は昔の姿になって戻って来た。今こそ本当の彼を取戻したのであった。
――左内さま、あなたは、少しの偽りもなく、あなたらしい生き方をなさいました、あなたらしい死に方をなさいました、あなたはもう再び、香苗の心から去っておゆきにはなりませんわ。
香苗は生きた彼に呼びかけるようにそう呟いて、ふところから辞世の詩を取出した。