Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうおんき
報恩記
Lesen Sie 報恩記 (ほうおんき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.803 Zeichen · 30 Bildschirme
なるほどそう云われて見れば、かれこれ二十年にもなりましょうか、まだわたしが阿媽港通いの「ふすた」船の船頭を致していた頃、あそこへ船がかりをしている内に、髭さえ碌にない日本人を一人、助けてやった事がございます。何でもその時の話では、ふとした酒の上の喧嘩から、唐人を一人殺したために、追手がかかったとか申して居りました。して見ればそれが今日では、あの阿媽港甚内と云う、名代の盗人になったのでございましょう。わたしはとにかく甚内の言葉も嘘ではない事がわかりましたから、一家のものの寝ているのを幸い、まずその用向きを尋ねて見ました。
すると甚内の申しますには、あの男の力に及ぶ事なら、二十年以前の恩返しに、北条屋の危急を救ってやりたい、差当り入用の金子の高は、どのくらいだと尋ねるのでございます。わたしは思わず苦笑致しました。盗人に金を調達して貰う、――それが可笑しいばかりではございません。いかに阿媽港甚内でも、そう云う金があるくらいならば、何もわざわざわたしの宅へ、盗みにはいるにも当りますまい。しかしその金高を申しますと、甚内は小首を傾けながら、今夜の内にはむずかしいが、三日も待てば調達しようと、無造作に引き受けたのでございます。