Japanische Klassiker mit Furigana
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じんあい、そら、はな
塵埃、空、花
宮本 百合子
Lesen Sie 塵埃、空、花 (じんあい、そら、はな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 671 Zeichen · 2 Bildschirme
今日などはもう随分暖い。昨夜一晩のうちに机の上のチューリップがすっかり咲き切って、白い木蓮かなどのように見える花弁の上に、黄色い花粉を沢山こぼしている。太い雌芯の先に濃くその花粉がついて、自然の営みをしているが、剪られた花故実を結ぶこともならない。空しき過剰という心持がしなくもなく、さしずめ悩ましき春らしい一つの眺めとも云うべきか、今頃から桜が散るまで私は毎年余り愉快に暮すことが出来ない。
春の東京を一帯に曇らす砂塵が堪らないのが第一の原因だ。花曇りなどと云う美的感情に発足したあれは胡麻化しで、実は塵埃が空を覆うのに違いない。一時間も外を歩くと歯の中までじゃりじゃりになるようだ。その心持も厭だし、春は我々こそと云うように、派手な色彩をまとった婦人達が、吹き捲る埃風に髪を乱し、白粉を汚し、支離滅裂な足許で街頭を横切る姿を見るのも楽でないことだ。京都など、そのように不作法な風が吹かないしほこりは立たないし――高台寺あたりのしっとりした木下路を想うと、すがすがしさが鼻翼をうつようだ。とかく白濁りの空の下に、白っぽくよごれた桜が咲いている光景、爛漫としているだけ憂鬱の度が強い。