Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ぼちてんぼうてい

墓地展望亭

久生 十蘭

Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme

Aozora Bunko

少女は、劇しい勢いで椅子の背に頭を投げかけると、よく響く声で、笑いはじめた。

「なんでもありませんの。……竜太郎さん、あたくし、しあわせよ。……ああ、いま、どんなに、しあわせだか!」

そういうと、また、沁みるような細い声で泣き出した。

湿った海風が、二人の上を吹いて通る。

竜太郎は、なんとなく、しみじみとした気持になって、土壇に膝をつくと、少女の手頸にそっと唇を触れた。竜太郎の耳に、少女のはげしい息づかいの音がきこえた。

「この椅子に、……あたくしのそばへ坐って、ちょうだい。……しっかりとあたくしの手を握って、……なにか、お話をして、ください。……あたくし、こうして眼をつぶって伺っていますわ」

竜太郎は、少女と並んで掛けた。柳の枝のようによく撓う小さな手だった。

「……そこで、あなたの名は?」

少女は返事をしなかった。

「では、苗字だけ」

少女は、悲しそうに、首を振った。

「あなたのことは、何もきいてはいけないのですか」

「えっ、何も!……どうしても、それは、もうしあげられませんの」

そういうと、気がちがったように、竜太郎の手を自分の胸に引きよせながら、

「どうぞ、あたくしを、好きだと言って、ちょうだい」