Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
……たけた、ほんとうに、この世のものとも思われぬようなつややかな顔を空へ向け、ぐったりと、死んだようになって、眼を閉じていた。
三
薄眼をあけて見ると、夜明けの色が、ほの青く窓を染めかけていた。
重苦しい睡気が頭のうしろに絡みつき、まだ半ば夢の中にいるような気持だった。
とつぜん昨夜の記憶が鮮やかに心の上に甦って来た。昨夜ここで……。
竜太郎は、小さな声で呼びかけた。
「眠っているの」
部屋の中は、ひっそりとしずまりかえっていて、時計の音だけが、浮き上るように響いている。
竜太郎は、そっと腕をのばして見たが、自分のとなりに誰も居なかった。
「どこにいる?」
家具が葵花色の影を床の上にひいているばかりで、何ひとつ動くものもなかった。
竜太郎は、もう一度くりかえした。
「どこにいるんだ?」
返事がない。
竜太郎は寝台からはね降りると、窓のところへ駆けて行って鉄鎧扉を開け放した。まさしく、部屋の中には誰れも居ない。あわてて浴室をのぞいて見たが、そこにも、人の影はなかった。
(行ってしまった!)
竜太郎が眠っているうちに、小鳥は飛び立って行ってしまった。
竜太郎は部屋着をひっかけると、大急ぎで階段を駆け降りた。