Japanische Klassiker mit Furigana
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だんのうらのおにび
壇ノ浦の鬼火
下村 千秋
Lesen Sie 壇ノ浦の鬼火 (だんのうらのおにび) von 下村 千秋 (しもむらちあき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.170 Zeichen · 15 Bildschirme
法師はもはやわれを忘れて歌っていました。
「なんという名手でしょう……ひろい国じゅうにも、これにまさるものはありますまい。」
「まことに、わたしも生まれてはじめて聞きます。」
そういうささやき声が、そちこちから聞えました。
法師は、ますます声をはりあげ、ますます、たくみにびわをひきました。平家一門の運命も、いよいよきわまり、安徳天皇をいただいた二位尼が水底ふかく沈むだんになると、いままで水をうつたようにしんとしていた広間には、いっせいに悲しげな苦しげな声が上がりました。その声は、だんだんと高まって、はては大声で泣きさけぶ声さえ、聞えてきました。
法師はなんともいえない気持にうたれながら、しずかに一曲をひきおわりました。広間の人びとの声は、それでもまだしばらくのあいだ、なげき悲しみつづけていましたが、いつか流れがたえるようにきえていくと、こんどはまた、恐ろしいほどのふかいふかい沈黙と、静寂が広間いっぱいにこもりました。
しばらくしました。と、さっきの老女の声が、また法師の耳もとでしました。
「かねて聞いてはいましたが、そなたのびわには、こころから感服しました。