Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

なつのはな

夏の花・心願の国

原 民喜

Lesen Sie 夏の花・心願の国 (なつのはな) von 原 民喜 (はらたみき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 152.816 Zeichen · 310 Bildschirme

Aozora Bunko

空間が小刻みに顫えて、頭の芯が茫として来る。このような時――人間は何を考えるのか――このような時、人間は人間の……人間の白い牙がさっと現れた。妹と嫂は絶えず何ごとか云って争っていた。

「口惜しくて、口惜しくて、あの嫁を喰いちぎってやりたい」

飢えてはいない隣家の農婦が庭さきで歯ぎしりしていた。その言葉は、しかし、ぴしりと僕を打った。喰いちぎってやりたい……人間が人間を喰いちぎる……一瞬にして変貌する女の顔がパッと僕のなかで破裂したようだった。

悲しげな無数の焔に包囲されて、僕が身動きもできないでいる時、しかし、人々は軽ろやかに動いていた。爆心地で罹災して毛髪がすっかり脱けた親戚の男は、田舎の奥で奇蹟的に健康をとり戻し、惨劇の年がまだ明けないうちに、田舎から新しい細君を娶った。無数の変り果てた顔の渦巻いていた廃墟を、無数の生存者が歩き廻った。廃墟の泥濘の上の闇市は祭日のようであった。人々はよろめきながら祭日をとり戻したのだろうか。僕もよろめきながら見て歩いた。今にもぶっ倒れそうな痩男がひらひらと紙幣を屋台に差出し、手で把んだものをもう口に入れていた。