Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme

Aozora Bunko

真正面の広尾方面しか、だからぼくの目にはいらなかった。調子よくとたんに返事をかえしながら、ぼくの頭の中には、リンリンと銀鈴の鳴りつづけているような興奮しかなかった。

「……面白くない風景だね。まったく」

しばらくの沈黙のあと、山口がいった。すでに彼は、ふだんの陰気な声音に戻っていた。ふと、ぼくも後頭部に冷たさをおぼえた。――案外、その陶酔のさめた速度の差は、彼とぼくの五メートルの差であったのかもしれない。ちょうどそれくらいの違いで、ぼくは頂上に到達し、そして、同じほがらかで律動的な快い煙突のてっぺん。――さっきのわけのわからない願望の頂点であったそこは、めざしていた幸福の存在した位置から、いまは味気ない充足の終点に変わっていた。寒風が、音をたてて耳たぶをかすめていた。

両手で左右の縁をおさえたまま、白っぽい冬の靄につつまれた視界いっぱいのバラックや安建築や未整理の焼跡の、なにか寒ざむとした荒涼たる景色を眺めわたし、ぼくは、なぜ自分が、こんな危険な高みにまで這いあがったのか、いまさらのようにわからない、見当もつかない、と思った。……ただ、まるで自分がどんよりと曇った不透明な冬空の一部に化したような、見下ろしている下界とは距離のある不思議なほど爽快な気分が、いまにも落ちるのではないかという本能的な恐怖心といっしょ