Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
きれないのである。別に善人ぶるわけではない。おそらく、僕らの多くの友人たちも、そこここでこんな苦労は必ずひそかに舐めさせられていることにちがいあるまい。
「神も仏もあるものじゃ。」
こんなことを久左衛門が口癖のように私にいうのも、やはりいつも気にかかるのは、神や仏のことからなのだろう。米はやる米はやるといいながら、一度もくれず、その後で、「神や仏は気持ちじゃ、人の気持ちというものじゃ。」とこうもいったりする。
おそらく今ほど人人は神仏のことについて考えているときはないだろうが、神を気持ちといったのは、私も自然な説教を聴くようで彼から米を貰うよりはどことなく気持ちも良かった。
「もう僕はあなたから米はもらいたくはない。」とひそかに心中で私は云っている。皮肉ではない。私が彼に米をやりたくなって来るのだから。
十月――日
透明な光線の中を風が騒ぐ。眉へ突きあたる蝿のかたまり。樹の幹を辷り降りてくる蛇の首。畑にのびて来た白菜。はげしく群れ飛ぶ赤蜻蛉の水平動。集り散っていった食卓の菜類の中でまだ青紫蘇だけが変らず出てくる。
稲刈――このごろの稲刈は中手だ。この中手は先日の暴風にあって実りが悪い。