Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
豹吉は亀吉たちと一緒に留置場の小さな入口――というより、穴をくぐってはいった。
そして、じろりと中を見廻した途端、
「あッ!」
豹吉は思わずぎょっとして、棒を呑んだようになった。
豹吉がぎょっとしたのは、針助が坐っているのを見たからではない。
針助がつかまったことは、小沢から聴いていた。
だから、そのことでは、豹吉は驚かなかった。
豹吉が見たのは――。
留置場の隅の方に、しょぼんと坐っている伊部の姿だった。
伊部――今朝、渡辺橋で釣をしていた得体の知れぬ奇妙な男!
その男を殺した――と、たった今刑事に白状して来たのだ。
ある時は、その殺したという罪で、自責の念にかられ、ある時はそのことを昂然と口にすることで少年らしい虚栄心を満足させて来た――いわば、今日一日とにもかくにも豹吉の心を支配して来たその男――死んだ筈のその男が、豹吉の眼の前に坐っているのだ。
さすがの豹吉もぎょっとせざるを得なかった。
われにもあらず、驚いたのだ。掟を破ったのだ。すかさず、亀吉が言った。
「兄貴、どないしたんや。顔色変えて……」
「どないもこないもない。こんなに、びっくりしたのは、生れてはじめてや」