Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
「――これ食べてもかめへんか。ムセンインショク(無銭飲食)でやられへんか」
と、不安そうに豹吉にだめを押した。
「心配するな」
「大将、ほんまに新円持ってるのンか」
「情けないこときくな」
豹吉は上衣の胸のあたりをポンと敲いて、
「――この通り、掏られも落しもせんさかい、安心して食べろ」
今さきハナヤの入口で自分を掏ろうとした頓馬な駆け出しの掏摸の顔を想い出しながら、にやりと笑ったが、ふと時計を見ると、もう豹吉の頬からえくぼが消えてしまった。
十一時半……。
十時に来ていつも十時半に帰ってしまう雪子だったから、もうこんな時間になって来る筈もない。
「しかし、なんぜ来ないのかなア。昨日おれの言ったことで気を悪くしたのかなア。それとも、なんぞ起ったンやろか」
ふとそう呟いた時、お加代の声が来た。
「あんたも随分物好きな人ね」
「今更言わんでも判ってる。おれから物好きを取ってしもたら、おれという人間がなくなってしまうよ」
「そりゃ判ってるわよ。だいいち中学校の体操の教師を投げ飛ばして学校を追い出されたくらいだから……」
「じゃ黙っとれ!」
「いや、喋るわ」
「選挙はもう済んだぜ」