Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
途端に、男の青い腕が袖から覗いた。
その青さに、小沢はどきんとした。青い腕――と見えたのは、刺青だったのだ。
「さア、行こう」
コップを置くと、男は娘をうながして、外へ出た。娘はヒョロヒョロした足で、ついて行った。
その時、食堂の隅で古いラッパつきの蓄音機が鳴り出した。
まるで、唖でつんぼの娘が出て行くのを待っていた――といわんばかしに鳴り出したその音を聴いていると、何かしら奇妙な感じが、小沢の頭の中をぐるぐると廻った。
ラッパつきの蓄音機がチグハグなのか。時代おくれの刺青を見たことがチグハグなのか。それとも、ネオンサインが大阪の盛り場の夜空を赤・青・紫に染めていた頃の、昔の甘い浅薄な流行歌を、焼跡のバラック建の食堂の中で、白昼きいていることが、奇妙なのか。
いや、それよりも今ここを出て行った男の行動が、何か奇妙なような気がしてならなかった。
あの娘を何のためにどこへ連れて行くんだろう。飯ならここで食えるのに、物好きな……。
いや、単なる物好きだけだろうか。
へんだぞと、小沢は呟いた。
小沢は食堂の女を呼んで、きいた。
「今の人、いつも来るの……?」