Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆめどのさつじんじけん
夢殿殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 夢殿殺人事件 (ゆめどのさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.755 Zeichen · 55 Bildschirme
寂光庵は、新薬師寺を髣髴とする天平建築だった。その物寂びた境域には、一面に菱が浮かんでいる真蒼な池の畔を過ぎて、子の桟が明らかになって来ると、軒端の線が、大海を思わせるような大きな蜒りを作って押し冠さって来るのだ。その金堂が、五峯八柱櫓のように重なり合った七堂伽藍の中央になっていて、方丈の玄関には、神獣鏡の形をした大銅鑼が吊されていた。そして、その音が開幕の合図となって、愈法水は、真夏の白昼鬼頭化影の手で織りなされた、異様な血曼荼羅を繰り拡げて行く事になった。
法水は庵主盤得尼の切髪を見て、この教団が有髪の尼僧団なのを知った。盤得尼は五十を越えていても脂ぎって艶々しく、凡てが圧力的だった。見詰めていると、顔全体が異様に昂って来る感じがするけれども、そこにまた、冷酷な性格を充分満せないような、何んとなく秘密っぽい画策的な、まるで魔女のような暗い影が揺めいているようにも思われるのだった。間もなく、法水は案内されて、本堂の横手口にある室に入った。そこは、左右に廊下を置いていて、書院一つ隔てた外縁の※(「木+需」、第4水準2-15-67)子窓からは、幽暗な薄明りが漂って来る。