Japanische Klassiker mit Furigana
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あやかしのつづみ
夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓
夢野 久作
Lesen Sie 夢野久作怪奇幻想傑作選 あやかしの鼓 (あやかしのつづみ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 76.558 Zeichen · 153 Bildschirme
老先生は小柄な、日に焼けた、眼の光りの黒いお爺さんであった。年はその時が六十一で還暦のお祝いがその春にある筈であったのが、思いがけなく養子の若先生が家出をされたのでその騒ぎのためにおやめになった。
若先生は名を靖二郎といった。私は会ったことがないが老先生と反対にデップリと肥った気の優しい人で、鼓の音ジメのよかった事、東京や京阪で催しのある毎に一流の芸者がわざわざ聞きに来た位であったという。家出された時が二十歳であったが着のみ着のままで遺書なぞもなく、また前後に心当りになるような気配もなかったので探す方では途方に暮れた。一方に気の早い内弟子はもう後釜をねらって暗闘を初めているらしい事なぞをおしゃべりの女中からきいた。
「あなたが大方あと継ぎにおなりになるんでショ」なぞとその女中は云った。
しかし老先生は私に鼓打ちになれなぞとは一口も云われなかった。只無暗に可愛がって下さるばかりであった。
けれども家が家だけに鼓の音は朝から晩まで引っ切りなしにきこえた。そのポンポンポンポンという音をウンザリする程きかされているうちに私の耳は子供ながら肥えて来た。初めいい音だと思ったのがだんだんつまらなく思われるようになった。