Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おおえどおうごんきょう

大江戸黄金狂

野村 胡堂

Lesen Sie 大江戸黄金狂 (おおえどおうごんきょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.754 Zeichen · 53 Bildschirme

Aozora Bunko

幾度か躓いて、爪先に血が浸み出した様子ですが、そんな事を考えて居る遑もないほど、お染がさらわれ、縛られ、さいなまれて居る幻想が、白日の眼の前にチラチラするのです。

「おッ」

万田龍之助は立ち縮みました。ツイ先刻、お染が淋しそうに見送って居た、ささやかな空地には、秋草がハタハタとなびくだけ、四方を隈取った箱根笹の海に呑まれたか、其処にはお染の影も形もなかったのです。

道はたった二本、今龍之助の来たのと丁度反対の方へ伸びて居る杣道を、滅茶滅茶に駆けました。時々大きい声で「お染」と呼び度い衝動に悩まされ乍ら、犇と唇を挟むんで――。

がそれは全く無駄な努力でした。何処まで行っても箱根笹の海で、その間を縫う杣道は、からかったように、ヒョックリ元の場所へ龍之助を導いて来るのです。

四半刻ばかり、傷ついた獣のように駆け廻った龍之助は、ハッと、草地の上に膝を突きました。

「あ」

赤い、燃え立つような扱帯が、長々と草叢の中を這って居るではありませんか。

絞りの麻の葉も、龍之助に取っては忘れようのないものです。紛れもないお染の品――と思うと、ツイ抱き締めるように立上りました。